
100歳を超えるまで長生きされた、故医師日野原重明(ひのはらしげあき)先生。
先生は、医師としての仕事の他に、本の執筆や講演などをされていて、そんな活動のうちの1つが、全国の小学校で、子どもたちに「命の大切さ」を伝える「いのちの授業」です。
この「いのちの授業」を行うときに、先生が実践している「ツカミの方法」を、紹介します。
何しろ相手は、小学生です。
日野原先生が、どんなに有名かなんて、いっさい関係ありません。
中には、まったく話を聞かない子やおしゃべりを始める子もいます。
そんな子どもたちに、興味を持って話を聞いてもらうため、先生は話を始める前に、子どもたち全員へ「あるものを配って、あることをさせる」のだそうです。
いわば、子どもたちに「いのち」への興味を、持ってもらうための前ふりですね。
さて、小学生たちに「いのちの大切さを伝える話」を始める前に、日野原先生は、子どもたちに「何を配って、何をさせるのでしょう?」
・・・。
・・・。
「いのちの授業」の話を始める前に、日野原先生が、子どもたちへ「配るもの」と「させること」。
それは・・・。
全員に聴診器を配って、自分の心臓の音を、聞かせる。
強烈なツカミですね。
「心臓の音を、聞いてごらん」と、促された子どもたちは、自分の胸に聴診器をあてて、ドクン、ドクンという「いのちの音」を聞きます。
「じゃあ、隣の人の心臓の音を、聞いてごらん」
そう言われて、今度は、隣の子とお互いに、聴診器をあて合う。
子どもたちが、生まれて初めて「心臓が動く音」を聞いて、「いのち」に興味を持ったところで、日野原先生は、こう言って、授業を始めるのだそうです。
「どうだい? 生きているだろう? 君たちは、生きている。お友だちも、生きているんだよ」
どんな言葉を並べるよりも、心臓の音は、インパクトがあり、説得力があります。
体験させる、触らせる、あるいは、実物を見せる。
そうすることで、グッと実感を持って、相手に感じさせることができます。
「いのちの音」は、子どもたちの耳に、何よりも温かく力強く、優しく響き、そして「いのちの大切さ」を、感じさせてくれるものだと、思います。
