心の地獄・極楽 1211


日本の江戸時代のことです。
ある禅僧のもとを1人の若い武士が、訪ねてきました。
その若い武士は、「人は死んだ後に、地獄に行く者もいると言いますが、本当でしょうか」と尋ねました。

するとその禅僧は、「侍のくせに地獄が恐ろしいのか」と言って、笑いました。
その若い武士は、バカにされたと思い怒り狂って、「何を言うか」と、刀に手をかけました。

その禅僧は、すかさず、「それが地獄だ」と、指摘しました。

その若い武士は、禅僧の言葉を悟り、「わかりました。申しわけありません」と、心を静めました。

それを見て、その禅僧は、「それが極楽だ」と、言いました。

禅の考え方では、地獄も極楽も「あの世」にあるのではありません。
現在の人の心の中にあるのです。

つまり、怒りから心を乱せば、すなわちその乱れた心が、地獄なのです。
気持ちを静め、おだやかな心となれば、そのおだやかな心が、極楽なのです。

このエピソードは、「腹立たしくなるような経験をしても、動じることなく、おだやかな気持ちでいれば、その人の心は、地獄へ落ちることはない。極楽の中にある」ということを、教えています。

心が、地獄か、極楽かは、あなたしだいなのです。
できれば、いつも気持ちがおだやかな、極楽でいたいものです。

2025年09月12日