いい仕事は手間と時間を惜しまない 1002


仕事で楽をしたいと、ついつい思ってしまいます。
手間や時間を、できるだけ省いて、効果や成果だけを、求めがちになります。
そう思いながら、仕事をしていると、思わぬときに、痛い目に合うことがあります。

素早く仕事を仕上げて、上司に見てもらうと、ダメ出しをくらうことがあります。
一度だけならいいのですが、何度もダメ出しを、くらうことがあります。
そういう場合は、仕事は早いけれど、いい仕事ができていないのです。

かってその完璧主義から「クロサワ天皇」とまで呼ばれた、映画監督の黒澤明のエピソードを、紹介します。

黒澤監督は、『七人の侍』や『生きる』などの名作を、残しています。
彼がどれくらい完璧主義者だったかというと、空の雲が自分のイメージしている形になるまで、待って撮影を始めたり、ロケ地で、民家から邪魔に伸している木の枝を、そのお宅にお金を払って、切ってもらったりと、それこそたくさんの伝説を、残しています。

そんな黒澤監督が『デルス・ウザーラ』という映画を、撮ったときのこと。
主人公で猟師のデルス・ウザーラが、ジャングルで野生のトラと出会うシーンが、あったんです。

当時はCGなんてありませんから、本物のトラが、用意されました。

ところが、そのトラをひと目見た黒澤監督。
「小さすぎる! もっと大きなトラを!」と、注文をつけます。
スタッフがサーカスから、大きなトラを調達してくると、今度は「目が死んでいる! 野生のトラでないとダメだ!」と注文。

しかたなく、なんとか野生のトラを用意すると、「ダメだ! やっぱり小さい!」。
困り果てたスタッフ、いったいどうしたと思いますか?
なんと、用意した野生のトラを、数ヶ月かけて太らせてから、撮影をしたのです!
そのおかげで、映画の野生のトラの登場は、なかなかの迫力になっています。

黒澤監督は、いい作品を作り、観客に感動をさせたかったのです。
そのために、映画の撮影に妥協はなく、手間と時間を、惜しみなく使ったのです。

いい仕事のためには、手間と時間を、惜しまないことです。
仕事に対して、誠心誠意没頭して、ジックリと取り組みましょう。
そうしないと、決していい仕事は、完成できないのです。

2021年08月27日