大変なほうが先 1149


島田洋七(漫才師)の佐賀の「がばい(すごい)ばあちゃん」の話を紹介します。

ばあちゃんの仕事は、学校の掃除婦だった。
だが、これが滅茶苦茶キツイ。
トイレと職員室を掃除するのだが、始業前には終わっていなければならないから、毎朝遅くとも四時起きだ。

当時のトイレは、水洗なんかじゃなくくみ取り式だし、コンクリートの床は、底冷えがする。
まだゴム手袋さえもなかったから、寒い冬にゴシゴシやっていると、あっという間に、手ががさがさになってしまうのだ。
ばあちゃんが、腰痛で大変そうだった日、手伝いに行った俺は、こう提案した。
「早朝は寒いから、先に職員室をやってから、トイレにしたら?」

でも、ばあちゃんは、キッパリと言った。
「大変なほうを先にやる。そしたら、後が天国だから」

「こんな寒い日ぐらい・・・」と一瞬思ったが、ばあちゃんの言うとおりにやってみて、なるほどと思った。
トイレ掃除の後の職員室の掃除の楽なこと。
本当に天国のようだった。

ほんの少しの「自分への厳しさ」が、ものごとを続けるコツなのだ。
「大変なほうが先!」そうやって毎日毎日、自分に言い聞かせてきたからこそ、ばあちゃんは、キツイ仕事をずっと続けることができたのだろう。

ばあちゃんは、78歳までの35年間、掃除一筋、1日も休まずに続けた。
はじめは小学校の掃除だけだったが、やがて、その丁寧な仕事ぶりと休まないことをかわれ、ばあちゃんは、中学校、大学と仕事を広げていった。

そして、7人の子どもたちを、立派に育て上げたのだ。
俺が後年、漫才師の修業で決して、音を上げなかったのも、ばあちゃんのそんな仕事ぶりを見ていたおかげだ。

何ごとにおいても、ついつい楽なほう、簡単なほうを優先させてしまいます。
そして、後の方になって、ますます大変になるのです。

大変な方を先に、頑張りましょう。
後が天国のように楽になり、気持ちも爽快なのです。

2024年07月05日