スーパーのレジの仕事で幸せ 1039


小さなスーパーで、レジ打ちをする、女性の話です。

今まで、天職を繰り返してきた彼女は、レジ打ちの仕事にも、不満を感じていました。
ある日、田舎の母親から「帰っておいでよ」という、電話をもらい、帰郷を決心した彼女。

荷造り中に、古い日記を見つけ、ピアニストを夢見ていた、少女時代を思い出します。
あの頃に比べ、すっかり「逃げ癖」が、ついてしまった自分・・・。
泣きながら「もう少しここで、がんばる」と、母親に電話した彼女。

翌日から仕事ぶりが、変わります。
ピアノの要領で、キーの配置を覚え、レジ打ちに余裕が出ると、一人ひとりのお客さんとの会話が、楽しくなってきたのです。
「今日は、マグロよりカツオが、おススメですよ」なんて、アドバイスすることもありました。

そして、ある日、彼女は奇跡の体験をします。
その日のスーパーは、大混乱でした。
彼女はいつものように、お客さんと会話しながら、レジ打ちに追われていました。

「恐れいりますが、空いているレジへ、お回りください」という、店内放送です。
えっ?、と思って、周りを見回した彼女は、「信じられない光景」を、目にしたのです。

五つあるレジのうち、お客様が並んでいるのは、自分のレジだけなのです。
他の四つのレジには、誰も並んでいないでは、ありませんか!

店長が駆け寄ってきて、お客様に「どうぞ、空いているレジへ、お回りください」と言ったその時。
一人のお客が、こう言い返しました。

「放っといてちょうだい。私はここに買い物に、来ているんじゃない。あの人としゃべりに来てるんだ」
その言葉を聞いた瞬間、彼女はその場に、泣き崩れました。
彼女はその後、レジ打ちの主任となり、新人教育にも携わるように、なったそうです。

働くということは、自分の存在証明なのです。
その存在証明が、何によってできるかというと、他人との関係の中で、できてくるのです。

働く意味というのは、そのような他人との関わりの中で、自分の必要性を、感じることです。
そのことが、みんなの幸せに、つながるのです。

2022年05月11日