最後の最後まで妥協しない 1043


何事にも、すぐに妥協する人がいます。
「これぐらいできていれば、いいや」「最後までできていないが、許してもらえるだろう」「完璧に仕上げるなんて、無理なことだ」などの言葉が、自然と口に出ることは、ありませんか。

そのようにいつも、妥協ばかりしている人は、いい仕事は、できないのです。
人からもしだいに、信頼されなくなります。

ここで、手塚治虫(漫画家)のエピソードを、紹介します。

ある日のこと。
手塚治虫から、少年漫画誌の編集者へ、こんな連絡があったそうです。
「さっき持って行った『ブラック・ジャック』の原稿を、戻して欲しい」

「ええっ?」となる編集者。
何しろ、毎週、毎週、原稿の完成が1番遅いのは、手塚センセイです。

そのときも、手塚の原稿の完成を待って、やっとのことで、印刷所へ原稿を、届けたばかりだというのに・・・。
「無理ですセンセイ、もう、印刷機が回っています」などと言っても、言い出したら聞かないのが、手塚治虫です。

しかたなく印刷所へ飛び、怒り狂う現場の人たちに、頭を下げて原稿を回収する編集者。
それを持って、大急ぎで手塚のもとへ。

原稿を受け取ったセンセイ、デスクに向かうと、原稿に手を加え始めます。
その時、すでに印刷所に行っていた原稿を、わざわざ戻してまで、手塚治虫が描き足したモノ。

それは・・・。
『葉っぱ2、3枚』

描き終えた手塚治虫は、「はい、OKです」と編集者へ、原稿を戻したそうです。
あ然となる編集者。
まさか、たったこれだけのために、「印刷に入ろうとしていた原稿を、戻させたとは・・・。

手塚治虫は、こう言っています。
「創作に携わる者が、完璧を目指さなくて、どうするんですか」

彼は、「神様が自分に与えてくれたミッション」を、全身全霊をかたむけて、果たしていたのです。
「仕事をさせてくれ・・・」が、最期の言葉だったという手塚治虫。

巨匠が『ブラック・ジャック』の原稿に、描き足した、「葉っぱ2,3枚」は、「創作」に携わるすべての人に、その「心構え」を教えているような気がします。
私たちも手塚治虫のように、どんな時も最後の最後まで、妥協しないで、生きたいものです。

2022年06月11日