花で人に幸せを 1092


これは、ある花屋の女性の話です。
実は彼女は、子どもの頃、体が弱くて入退院を繰り返す日々を送っていました。
そんな彼女をなぐさめてくれたのが、病室に飾られた花だったのです。

「花は、人をなぐさめて勇気をくれる。私は大人になったら、花屋さんになって、たくさんの人たちを勇気づけたい」
病室で自分の心を癒してくれる花を見て、彼女はそう決心しました。

やがて、フラワーデザイナーとなり、東京で起業します。
仕事は、企業のイベントやウエディングでの会場装花。
しかし、会社を維持するのは、簡単ではありませんでした。
スタッフを抱え、日々の仕事に忙殺されます。

そんな時、あの東日本大震災が、発生したのです。

彼女の会社の生命線である、企業のイベントやお祝い行事は、軒並み「自粛」により中止になりました。
入っていた仕事は、すべてキャンセル。
その後も、まったく注文がない日々が続きます。

途方にくれた彼女は、とうとう会社をたたむ決心をします。
花屋をやめる決心をした彼女は「どうせもう売れない花なら・・・」と、1000本のヒマワリを持って、東北へ向かいました。
被災した人たちへ、ひとりに1本ずつ、ヒマワリを渡して、少しでも元気になってもらおうと、思い立ったのです。

被災地でヒマワリを配ろうとすると、あっという間に、行列ができたそうです。
そのひとりひとりに、ヒマワリを渡す彼女。
彼女からヒマワリを受け取った人たちからは、こんな声が・・・。

「ありがとう、生の花を久しぶりに見た気がするよ」
「ありがとう、花を眺めて暮らすと、元気が出るわ」
「ありがとう」
「ありがとう」
「ありがとう」

被災者の人たちの感謝の言葉を聞いて、彼女は思い出しました。
私も子どもの頃、病室で花によって生きる希望を、持つことができたんだっけ・・・。
「そうだ。花を通して、ひとりでも多くの人に、幸せになってもらいたい! そう思って花屋になったのに、忙しくて、いつの間にかそれを忘れていた!」

東京に戻った彼女は初心に戻り、「花で人に幸せを届ける」をコンセプトに、新たな事業をスタートさせました。
彼女は現在、「人と人を結ぶお花屋さん」の代表として、多忙な日々を送っています。

一時、花屋をあきらめかけた彼女を救ったのは、「花を受け取る人たち」の笑顔だったのです。
花には、人を笑顔・幸せにする、大きな力があるのです。

2023年05月21日