
中国の『準南子』の中に、「舟覆(くつがえ)りてすなわち善く泳ぐを見、馬奔(はし)りてすなわち良く御(ぎょ)するを見る」とある。
「舟がひっくり返ったときに、はじめて泳ぎの達者な人間で、あるかどうかがわかる。馬が走り出したときに、はじめて乗りこなす術を心得ている人間で、あるかどうかがわかる」という意味だ。
つまり、ピンチに陥ったときに、はじめてその人の真価が、発揮される、というのである。
馬が並足で駆けているときは、馬術の心得のない者でも、背中にしがみついていることは、できるかもしれない。
だが、ちょっとスピードをあげれば、たちまち悲鳴をあげたり、ふり落とされたりしてしまう。
事業経営でも、同じことだ。
時に恵まれれば、凡庸な経営者でも、それなりの成績をあげることができる。
だが、それを自分の実力だと、錯覚してはならない。
実力が試されるのは、ピンチに陥ったときだ。
ピンチは、必ずおとずれる。
そのピンチを、乗り切ってこそ、1人前の経営者と言えるのだ。
ふだんから実力を、養っておくことを、忘れてはならない。
