
テレビドラマに出てくる犯罪者が、「積年の恨みをはらすために、復讐した」と、よく言います。
悲しいことですが、人に対する恨みのために、人は犯罪を起こすのです。
「積年の恨み」という言葉のとおり、恨みは積もるほど大きくなり、ついにそこから逃れることが、できなくなります。
「罪を憎んで人を憎まず」と、いう言葉があります。
これは、「犯した罪は、憎むべきだが、その人が罪を犯すまでには、事情もあったのだろうから、罪を犯した人そのものまで、憎んではいけない」と、いう意味です。
ここで、江戸時代の終わりから明治・大正と活躍した、渋沢栄一という実業家のエピソードを、紹介します。
ある日、彼のもとに、新しい会社を作るための相談に来た、経営者がいました。
しかし、彼には、無謀に思えたので、「やめたほうがいいよ」と、伝えました。
ところが、相手は、会社を作ることを妨害されたと、誤解をしました。
数日後、彼は、その経営者が雇った、男性2人組に襲われて、ケガをしました。
その後、彼らは、逮捕されました。
そして数年後、彼は知人から、出所後の男たちが、貧しい生活を送っていることを、聞きました。
「罪を憎んで人を憎まず」と、考えていた渋沢さんは、その男たちに同情して、人を通していくらかの資金を、渡しました。
男たちは、過去に彼を襲ったことを、申し訳なく思い、彼のもとを訪ねました。
すると、彼は、「あのときのことは、今さら聞いても、不快になるだけです。ですから、今後も事件については、一切口にしないようにしましょう」と、言ったのです。
彼は、自分にケガを負わせた相手を、怒ることもなく、むしろ、気の毒に思い、優しく接したというのです。
渋沢さんは、罪を犯すことは、いけないことでも、犯した人を、いつまでも憎むことはしなかったのです。
それよりも、快く許しているのです。
誰でも状況しだいでは、恨みのために犯罪などを、犯す可能性はあります。
罪を犯した人、恨みを持っている人に対して、許したほうが、結局、自分も相手も、幸せになれるのです。
