幸福な死を迎えよう 899


どんな人も、避けて通れないことがあります。
それは、必ず死を、迎えることです。

若い人は、あまり死について、考えることはないでしょう。
しかし、高齢になり、残りの時間が短くなると、しだいに死が、間近に感じるようになります。

みなさんは、どのような死を、願っているのでしょうか。
ここで、映画評論家の故淀川長治(ながはる)さんのことを、紹介します。

淀川さんは、日本映画の歴史上にしても、その人となりにしても、実にすごい人でした。
「サイナラ、サイナラ」のおじさんということで、名前が知れ渡っていました。
あらゆる映画関係者から、尊敬畏怖される人であり、神様のような存在だったのです。

その淀川さんは、お亡くなりになる前日まで、仕事をしていたということで、最期の言葉は「もっと映画を見なさい」、だったといいます。
最期の最期まで、映画のことしか、考えていなかったのです。

そんな淀川さんは、かってこんなことを、言っていました。
「映画の上映が終わって、館内に明かりがついて、客がみんな帰ってしまうんですね。その中で、1人だけまだ客席に、座っている老人がいて、警備員さんが、もう終わりですよ、と肩を叩くんですが、その老人は、死んでいるんですよ。その老人が私だったら、どんなに幸せなことでしょう」

淀川さんにとって、死ぬことが、自分の生き方の延長にしか、過ぎなかったのかもしれません。
映画に出会い、映画を愛し、映画とともに生き、映画とともに、死んでいかれたのです。

死ぬときも、特別なことでなく、いつものようで、ありたかったのでしょう。
まさに幸福な死を、迎えられたのです。

みなさんは、どのような幸福な死を、迎えることが、できるでしょうか。
少し先のことですが、イメージしてみては、いかがでしょうか。

2021年01月06日