長島三奈(長嶋茂雄氏の次女・テレビキャスター)さんが、「熱闘甲子園(試合のダイジェスト番組)を長年担当した中で、もっとも忘れられない光景」として、語っている話を紹介します。
それは、三奈さんが初めて『熱闘甲子園』のキャスターとなった年、栃木県で夏の予選大会を取材した時のことでした。
その日、三奈さんが取材したのは、準々決勝の試合。
前年に夏の甲子園で、ベスト8まで勝ち進んだ佐野日大高校と、栃木県の春の大会覇者、小山西高校という強豪同士の対戦です。
試合は白熱。
延長戦までもつれ込んだ結果、延長13回裏、佐野日大が決勝点を奪い、6対5でサヨナラ勝ちという、劇的な幕切れとなりました(佐野日大はその後、栃木県大会で優勝。栃木県勢として、初の2年連続甲子園出場を果たしました)。
三奈さんが「忘れられない光景」を目撃したのは、この準々決勝の試合後のこと。
佐野日大にサヨナラ負けを喫した、小山西の選手たちは、試合の後、あまりにも悔しい敗戦に茫然とし、球場を離れることができずにいました。
夏の予選大会に敗れたということは、レギュラーである3年生は「甲子園大会に出場する」という夢が、消え去ったことを意味します。
すでに照明が消えた球場で、ずっと泣きじゃくる選手たち。
その選手たちに向かって、監督は、こう言ったのです。
「もう1度、自分の守備位置についてこい!
今日の空と土の感触は、もう2度と味わえない。
だから、もう1度、しっかりと感じてこい!」
監督の言葉で、守備位置についた選手たち。
その場で、ある選手はうずくまって、そして、ある選手はあお向けになって、泣き続けたのです。
その光景をみて、三奈さんもまた涙が止まりませんでした。
甲子園出場の厳しさ。
選手たちのピュアな心。
そして、その選手たちに、真剣に向き合う監督の姿。
それらのすべてに感動して、あとからあとから、涙があふれたのだそうです。
流れる涙は、感動の証なのです。
感動を味わった人にしか、流せない涙なのです。
泣きたい時は、思いっきり、涙を流しましょう。
流した涙は、人生の大きな宝となるのです。