物の価値はその人しだい 1123


携帯電話を購入して、喜んで大切に使っていた人がいました。
しばらくして、新しい携帯電話が販売されると、その人は、すぐに新しい携帯電話に乗り換えていました。

この頃の人は、新しい物に目を向けすぎて、物の価値をあまり大切にしない傾向にあるように感じました。
ここで、ある家庭の車の話を紹介します。

ある日、ぴかぴかの新車が、庭に入ってきました。
運転するお父さんの誇らしげな横顔が見えます。
お母さんは、この色がいいと思っていました。
新車を買うのは、初めてのこと。

「すごい!」。
子どもたちも大喜びです。
夏の間、子どもたちは、洗車を手伝いました。
車に乗るときは、中で物を食べないようにし、座席を靴で汚さないように、気をつけました。

秋がきました。
近所の人が、最新モデルの車を買いました。
それもお父さんの車よりも安い値段で。

お父さんは、顔を曇らせて言いました。
「うちも、あの車にすればよかった。あと2、3ヵ月待っていれば、あれが買えたのに」。
お母さんは、慰めて言いました。
「いいじゃないの。みんなうちの車が、気に入ってるんだから」。

でも、お父さんは、機嫌を直しませんでした。
道であの新車を見かけると、羨ましそうにじっと目で追っています。
子どもたちは、事情がよく飲み込めませんでしたが、お父さんがもうあまり車を大切にしなくなったのはわかりました。

いつの間にか、子どもたちも、自分のうちの車に興味を失い、どうでもいいと思うようになってしまいました。
土足で座席に上がっても、お菓子を食べて、食べかすを散らかしても、もう平気です。
車は薄汚れ、ほんとうにつまらない車に、なってしまいました。

お父さんは、新車をとても大切にしていました。
そのことで、家族も同様に新車を大事にしていました。
ところが、お父さんは、近所の最新モデルの車を見て、家にある車の価値を大きく下げてしまったのです。
そのせいで、家族も同様に、車を大事にしなくなりました。

このように、物の価値は、その人しだいなのです。
しかし、どんな物でも、大きな価値があるのです。
その価値をいつまでも、大切にしたいものです。

2024年01月07日