仕事を成し遂げたら、身を引くのが天の道だという、古い中国の教えがある。
なぜ身を引くことが、よしとされるのか。
そのほうが、今まで築き上げた功績や名声を、まっとうすることができるからである。
逆に、いつまでも地位に、恋々(れんれん)とすれば、どうなるか。
満杯になった水は、すぐにこぼれてしまうように、せっかくの地位まで、失ってしまうかもしれない。
この処世を身をもって示したのが、漢の劉邦(りゅうほう)に仕えた軍師の張良(ちょうりょう)である。
彼は、劉邦に天下を取らせるや、「今、私は三寸の舌をもって、帝王の師となり、一万戸の領地を拝領して、列侯(れっこう)につらなっている。これで、私の役目は終わった。あとは俗世を捨てて、仙界(せんかい)に遊びたい」と言って、政治の世界から引退し、余生を楽しむことに専念したという。
我々も、登りつめたときに、引退の場を考えておいたほうが、よいのかもしれない。
潔く身を引くことは、勇気がいることであるが、天の道でもあるのです。
