魂を輝かせ生きよう 817


病気・困難なこと・苦しいこと・逃げたいことがあります。
そんな時は、人は死を、意識することがあります。

生きることよりも、死を選択したくなるのです。
何もかも上手くいかず、体も心も弱り果て、生きる気力が、なくなります。

ここで、空海にまつわるエピソードを紹介します。

あるとき、すでに高僧となっていた空海が、弟子たちと一緒に山を下りていくと、途中、疫病が多発し、病にかかった人々が、なすすべもなくもがき苦しみ、パニックになっている村に、さしかかりました。
その村に入った瞬間、空海が見たのは、おぞましい光景でした。
そこでは、まだ発病していない民衆が、疫病退治だと言って、すでに疫病にかかった親子のいる家に、火をつけて燃やしていたのです。
空海は、弟子たちとともに、それを必死で止めました。
そして、疫病患者を安全な場所に移動させ、「私たちが助ける」と伝え、患者たちの体をあたため、その場で薬草を調合し、加持祈禱(かじきとう)をしようとしたのです。

すると疫病にかかって、苦しむ一人の女性が、自分の身に絶望し、空海にこう言ったのです。
「お坊さま・・・。どうか、私を楽にさせてください!どうか・・・もう・・・、逝(い)かせて下さい・・・」と。
それを聞いた空海は、こう言ったのです。
「逝ってどうする?」

するとその女性は、涙を流して、こう訴えたのです。
「生きていても・・・なにも、いいことなんてありません・・・。こんな体になってしまって・・・。ただただ辛いだけです! だから、もう・・・成仏(じょうぶつ)させてください」と。

すると空海は、こう言いました。
「この世で成仏せずして、人はあの世でどうして成仏できよう・・・。この父母からもらった大切な体のあるうちに、幸せにならずして、どうして人は救われよう・・・。この世で成仏できてこそ、あの世での成仏があるのだ。この世で生きて、この体のあるうちに、幸せになるのだ。さぁ・・・。体をあたため、薬を飲むのだ、治すのだ・・・。この大自然を見よ! 風が吹き、明るい陽(ひ)が射し、宇宙全体が、こうして生きているように、自分の心の中に風を吹かせて、自分の心の内側から光を放ち、魂を輝かせるのだ。そうやって宇宙とつながり、ひとつになれば、生きる力を得られるのだ」

そして、薬をこしらえ、必要な手当をほどこし、加持を行い、衆生(しゅじょう)たちを、疫病と生きる苦しみから、次々と救っていったのです・・・。

空海の教えのように、どんな時も、魂を輝かせて、生きましょう。
生きている必要があるから、生きているのです。
魂が宇宙に帰るその日まで生き、成仏できるように、幸せになりましょう。

2020年10月16日