落ち込んでいる人に優しさを 1063


何か失敗やトラブルがあり、心が落ち込んでいる人がいたら、あなたはどうしますか。
落ち込んでいる人に、優しく接することが大切だ、と思っている人が、多いと思います。
しかし、実際に落ち込んでいる人に、出会った時に、本当に優しく、できるでしょうか。

天才ギャグ漫画家、赤塚不二夫のエピソードです。

『天才バカボン』を、描き上げた赤塚不二夫、締め切り前に編集者に、原稿を渡します。
しかし、その後大事件が・・・。
「原稿をタクシーに、置き忘れて、なくしてしまいました!」と、編集者が蒼白で、戻ってきたのです。

タクシーとは、連絡がつきません。
しかし、翌日には原稿を印刷所に、渡す必要があります。
まさに大ピンチ!

しかし、赤塚不二夫は、まったく怒ることなく、「ネーム(脚本のようなもの)があるから、また描ける」と言い、さらに・・・。

「まだ少し時間がある。飲みに行こう」

こう言ったのです。
これはもちろん、落ち込んでいる編集者を、気遣っての言葉です。

飲んで戻った赤塚は、また数時間かけて、同じ話を描き上げて、「2度目だから、もっとうまく描けたよ」と言って、その原稿を編集者へ、渡したそうです。

紛失した原稿は、1週間後にタクシー会社から、赤塚不二夫宛てに、郵送されてきました。
「2度と同じ失敗を、繰り返さないように、お前が持ってろ」と、赤塚不二夫からその原稿を、プレゼントされた編集者は、その後35年間も、自分への戒めとして、持ち続けたそうです。

そして、赤塚不二夫が、亡くなった時、「この原稿の役目を終わった」と、娘さんに原稿を戻したのです。
だから、現在「天才バカボン」の同じ回の原稿が、2つ存在するのだそうです。

ファンからも出版関係者からも愛された、彼の葬儀の参列者は、1200人に及びました。
本当の優しさを、持った赤塚不二夫が、いかに慕われていたかが、わかります。

完璧な仕事や勝ち負けに、こだわっていると、誰かが失敗して、落ち込んでいる時に、ついそれを、責めてしまうものです。
でも人間、完璧な人なんて、いないですから、誰でもミスを犯します。

本当の優しい人とは、誰かが失敗した時やトラブルが起きた際にも、周囲を気遣うことが、できる人なのです。
落ち込んでいる人にこそ、人の優しさが、必要なのです。

2022年10月27日