自分の愚かさを魅力に 799


人は、誰でも自分に、愚かさがあると感じています。
どうして、こんな愚かさがあるのだろうと、嘆き悲しみます。

しかし、はたして自分にとっての愚かさは、絶対的な愚かさなのでしょうか。
ここで鎌倉時代の禅僧、道元(どうげん)の話を紹介します。

道元は鎌倉に滞在し、庶民のために、人生相談を行っていました。
ある日、一人の武士が道元に、こんな相談を持ちかけたことがありました。

「私は農民から年貢を、取り立てなければならない立場にあるのですが、年貢を納められない農民がいると、可愛そうに思えてきて、ついつい『まあ、よい』と、言ってしまうのです。そのため、上司から『だらしがない』と、いつも叱られます。そんな自分が、情けなくてなりません」

道元は、その武士に、次のようにアドバイスをしました。
「あなたは、大変素晴らしい方で、いらっしゃいます。年貢を納められない農民を、哀れに思い、取り立てを強要しないのは、他人を思いやる慈悲深さの証拠です。ですから、自分を責めたてることなどありません。むしろ、『これも自分の魅力』と、自分に向けて言い聞かせてはどうでしょう」

道元の言葉は、『自分の愚かさは、見方を変えると、素晴らしい魅力になる』ことを、教えています。
誰だって、いただけないところはあります。
しかし、それも時と場合によっては、その人の魅力になるのです。

例えば、会社でみんなを引っ張っていくリーダー性がなくて、周りの人のお世話をしている人がいます。
その人は、自分にリーダー性がなく、周りの人の世話ばかりしているので、悩んでいます。
しかし、リーダー性がなくても、周りの世話ができるので、気が利く優しい人なのです。
これもその人の素晴らしい魅力だと認めれば、自分を責めることは、なくなるでしょう。

自分の愚かさを、非難することはありません。
見方を変えれば、自分の愚かさは、素晴らしい魅力になるのです。

2020年09月28日