親は子どもから自立しよう 710


安泰寺第9代住職(ネルケ無方)が、次のような話をされました。

安泰寺によく中学生や高校生をつれてくる親がいます。
「バカ息子をビシバシ教育してください」と私に言います。
親の気持ちより、ここで修行するはずの本人の気持ちが聞きたいのです。

「君自身はどうなの? 本気で修行したいと思っているのか」と聞くと、やはり親が子どもにかわって答えるのです。
「もちろん本人も修行したいと思っています。そうですよね○○くん?」

ところが、自分の足で山を登らないで、親の車に乗せられてお寺に来た人のほとんどは、途中で挫折します。
「帰るときだけは迎えに来ないで、自力で家まで帰って来させてください」と親に説明をしても、「まだ子どもですし、私たちも心配ですから、その時はちゃんと迎えに上がります」と言うのです。
ああ、それではまるで幼児の保育所への送り迎えではありませんか。

この話から、子どもの自立ためには、親が子どもから自立することが重要であることを強く認識させられます。
親は、子どもが幼い頃は、子どものお世話で必死になります。
しかし、中学生や高校生・大学生、さらには大人になっても、親が幼い頃と同じように、お世話を続けるのです。

そうであれば、親は子どもからの自立ができていないことになり、そのことで子どもは、親からの自立を妨げられていることになります。
子どもの成長と共に、親は子どもから自立することで、子どもの自立を高めなければならないのです。

ここで、ハリール・ジブラーンという詩人の「子どもについて」という詩の一部を紹介します。

あなたの子は、あなたの子ではない
いのちがいのちを求める、その息子であり娘である

あなたを通してこの世に出てきたにすぎず、あなたから来たものではない
あなたと共にいるものだが、あなたのものではない

自分の愛を与えても、自分の考えを与えるな
彼らには、自分の考えがあるのだから
彼らの身体を自分の家で住まわせても、彼らの魂をそこで住まわせるな
彼らの魂は未来という家に住んでいるのだから、あなたは、その家を訪れることはできない、たとえ夢の中でも・・・・・・

あなたは、子どもという生きる矢を放つ弓なのだ

この詩人は、欧米ではシェークスピアと老子に続く、三番目に売られている詩人だと言われています。
あなたの子は、あなたの子どもではないのです。
あなたは、子どもという生きる矢を放つ弓で在り、子どもは未来に放つ矢なのです。

このことを親として、強く意識しましょう。
そして、子どもの輝かしい未来のために、親は子どもから自立をしましょう。

2020年07月01日