相手の状況を理解して行動しよう 671


相手の状況をしっかりと理解して、的確に行動することが苦手な人がいます。
若い会社員Aさんは、昔から「空気が読めない」と言われてきました。

Aさんは、会議に遅れてきた部長が、恥ずかしそうに会議室に入るのを見ました。
そこで、Aさんは、「部長、三分遅刻ですよ」と事実を伝えました。
すると部長からイヤな顔をされ、会議後に注意を受けました。

部長は、遅れて申し訳なく思い、恥ずかしそうに会議室に入ったのです。
そうであるならば、Aさんは部長が恥をかかないように、静かに黙っているとか、「そんなに待っていませんから、心配しないでください」と言った方が、部長が喜ぶと思います。

相手の状況を理解して行動するためには、相手の立場に立って考えてみる想像力が重要です。
ここで、「困った息子(日本の昔話)」を紹介します。

昔、あるところに世間知らずの困った息子がいました。
あるとき、息子が木に登っていたら、お葬式の行列が通りましたが、息子は、この上でそれを眺めているだけだったので、親が飛んできて叱りつけました。
「こらっ、お葬式が通るときは、木から下りて南無阿弥陀仏と拝むものだぞ」

次の日も、息子が木に登っていると、今度は嫁入りの行列が通りました。
すると、息子は木から下りて、「南無阿弥陀仏」と拝んだのです。
その様子を見ていた親が飛んできて、今度はこう叱りつけました。
「バカたれ。南無阿弥陀仏と拝むのは葬式のときだ。嫁入りの行列のときは、おめでたい歌でも歌うもんじゃ」

その次の日、息子は町に行きました。
町では火事があって、大勢の人が騒いでいます。
これは、おめでたいことだろうと思った息子が、おめでたい歌を歌うと、「火事におめでたい歌など歌うもんでねえ。家をなくした人の身にもなれ」と、町の人たちからこっぴどく叱られ、棒でたたかれてしまいました。
家に帰ってその話をすると、「そういうときには、水の一杯もかけてやるもんだ」と親から叱られました。

次の日も町に出かけた息子が、鍛冶屋の前を通りかかると、鍛冶屋が火をおこし、鉄を溶かしていました。
息子が火事だと思って水をかけると、鍛冶屋は怒って追いかけてきました。
逃げ帰った息子が、親にそれを話すと、「そういうときは、たたいて手伝うもんだ」とまた叱られました。

次の日、息子が町に行くと、酔っ払い同士が棒を振り上げケンカをしていました。
これを見た息子は、仕事をしていると思い、棒で酔っ払いたちをたたいたところ、逆に酔っぱらいたちから袋だたきに遭い、とうとう体中がコブだらけになってしまいました。

この話は、困った息子の行いを通して、「TPO(時、場所、場合)をわきまえない言動をとると手痛い目に遭う」ということを教えています。
つまり常に相手の身になって考えないと、相手を不快な思いにさせてしまうことになるので、いつ、いかなるときも共感能力を身につけ、相手の立場になって考えて行動する必要があるのです。

「自分があの人と同じ立場だったら、どう考えるだろうか」
「あの人と同じ境遇にいるとしたら、どうしてもらうと嬉しいか、助かるか」

このように相手の立場に自分の身を置いて想像することで、状況を理解し、的確な行動をすれば、みんなから喜ばれる人になれるのです。

2020年05月23日