有頂天にならない 693


ある家族が、貧乏な生活をしていた時は、お金を大切にして、つつましく幸せに暮らしていました。
ところが、宝くじが当たって、大金が手に入り、大喜びをしました。

それから家族の人生が、大きく変わったのです。
お金があるせいで、有頂天になってしまったのです。

家族みんなで、お金をどんどん使ってしまいました。
そして、お金がなくなり、その後さらに借金を積み重ねてしまいました。
そこから、貧乏で不幸な生活になってしまったのです。

仏教では、「人の心を惑わす、八つの風がある」と教えています。
それが、「八風(はっぷう)吹けども動ぜず」という禅語の中にある「八風」です。
「これらに惑わされずに、生きていってください」という教えが、「動ぜず」の言葉に込められています。

「利(り)」・・・・思いが叶うこと
「衰(すい)」・・・思い通りにならないこと
「毀(き)」・・・・陰で悪口を言われること
「譏(き)」・・・・目の前で、悪口を言われること
「誉(よ)」・・・・陰で、褒められること
「称(しょう)」・・目の前で、褒められること
「苦(く)」・・・・辛い経験をすること
「楽(らく)」・・・楽しい経験をすること

「衰」「苦」「毀」「譏」という辛い経験をしたときも、思い詰めることなく、希望を失わないことです。
人の噂など相手にせずに、しっかりと自分のやるべきことを果たしていくことです。

面白いのは、「利」「誉」「称」「楽」という幸せな経験も、人の心を惑わすと教えているのです。

好調のときや、長年の夢が叶って幸せでいっぱいのときこそ、いい気になって浮かれてしまい、自ら不運を招く人が大勢いるのです。
先ほどの家族は、これに当たるのです。

幸運の後には、また様々な困難がやってくるので、それに備えて、心づもりをしておくことが大切だと教えています。

辛いときは、前向きに生きましょう。
幸せなときは、有頂天にならないで、謙虚な気持ちと慎重さが必要なのです。

2020年06月14日