イバラの道を進もう 695


誰でもイバラの道は、避けて通りたいものです。
イバラの道は、困難な状況や苦労の多い人生の道だからです。
しかし、本当にイバラの道を避けて、楽な道がいいのでしょうか。

ここで、近江商人の話を紹介します。

江戸時代、近江地方の商人は、たいへんな商売上手として知られていました。
現代の名の知れた大企業にも、近江商人をルーツに持つ会社はたくさんあります。

近江商人の商売の基本は、『行商』でした。
生まれ故郷を離れ、知らない土地へ商品を売りに行くのです。
これはある意味、『イバラの道を歩むこと』でした。
というのも、生まれた土地で商売をするほうが、知り合いがたくさんいますから、楽なのです。

しかし、近江商人は、あえて見知らぬ土地で苦労して、商売することを選んだのです。
その苦労が、「商売のセンス」を磨いてくれると信じていたのです。
そうして近江商人は、実際にどんな苦境にも負けない、たくましい商売根性を育てました。

禅語に、「平地上に死人無数(へいちじょうにしにんむすう)」があります。

一見、物騒な印象を受ける言葉ですが、「平らな大地を歩いていくのは、楽なものです。しかし、楽だからこそ気持ちが緩み、なんでもないところでつまずき、転んでケガをする人もたくさんいます。人生も同じで、楽なほうへ、楽なほうへと進みたがる人は、努力するのがバカらしくなって、生きていながら死んでしまったような人になる」ということを、この禅語は教えています。

あえてイバラの道を進め、というわけです。
人生においては、仕事や恋愛、人間関係などでも、失敗したり難しい問題が起こります。
それを乗り越えようと、苦労するほうが、結果的に得られるものも大きいのです。

勇気を出して、イバラの道と分かっていても、一歩踏み出して進んで行きましょう。
必ず苦しさが喜びに変わるときが、やってきます。

2020年06月16日