知恵を進んで教えよう 674


数学の問題でつまずいている時に、友だちからヒントをもらい、大いに助かったことがあります。
仕事で難しい問題に直面していた時に、上司から解決方法を教えてもらって、何とか問題をクリアできたことがあります。

自分一人だけの力で、何でも解決できればいいのですが、一人の力ではどうすることもできない場合が大変多いのです。
そんな時に、周りの人が良い知恵を出してくれると、本当に助かります。
感謝でいっぱいになります。

ここで、「姥捨て山(日本の童話)」を紹介します。

ある殿様が治める国では、「男でも女でも六十歳になると、その子や孫が、その人を姥捨て山に捨てに行かなければならず、そのルールを守らなければ罰せられる」という決まりがありました。

ある年のこと、ちょうど六十歳になったおじいさんがいました。
その息子と孫の太郎は、とてもつらい気持ちで、おじいさんをおぶって姥捨て山に出かけました。
しかし、どうしてもおじいさんを捨ててくることができず、こっそり連れて帰り、家の奥に隠しました。

その頃、この国に隣の国から使者が訪れました。
隣の国の殿様は、あわよくばこの国を乗っ取りたいと考えて、使者を遣わしたのです。
使者は、ある村の民衆を集めて、出したナゾが解けるかどうかで、その力を試そうと考えました。
もし、ナゾが解けなければ、「あの国には利口な者がいないので、簡単に乗っ取れそうです」と報告できるからです。

まず、最初に使者は、色も形もそっくりな二匹のヘビを出して、こういいました。
「さあ、どちらがオスで、どちらがメスかわかるかな」
みんな首をひねるばかりだったので、困った役人が、そのナゾを大声で民衆に問いました。
すると、孫の太郎が進み出ていいました。
「座敷にワタを敷いて、はわせてみればわかります。ノロノロはい出す方がオスで、じっとしている方がメスです」

正解でした。
太郎は、以前、おじいさんから聞いて知っていたので答えられたのです。
それから難しいナゾが次々に出されましたが、太郎は家に帰っておじいさんに聞いては答えました。
すると、使者は「この国は利口者のいる手ごわい国だ」と思い、こそこそ帰っていきました。

一安心した殿様が、太郎にほうびを与えようとしたとき、太郎はこういいました。
「これは私の手柄ではありません。全部おじいさんに教わったことです」
ナゾを解いたのが、本当はおじいさんだということがわかった殿様は大いに反省し、年寄りを姥捨て山に捨てる決まりをすぐにやめ、以後、年寄りを大切にするようになりました。

登場するおじいさんは、殿様が決めた「年寄りを姥捨て山に捨てる」というルールのせいで、大変な思いをしました。
でも、殿様を恨むことなく、知恵の出し惜しみもしませんでした。
ですから、国を救うことができたし、最終的には「年寄りを姥捨て山に捨てる」というルールもなくなりました。

無私の精神を持って、知恵をどんどん提供することで、相手の役に立つように努めれば、いつかそれが恩恵となって、自分の元に返ってくるのです。

労力をいとわず、あなたが持っている知恵を進んで人に教えましょう。
それが、多くの人とあなたを幸せにしてくれるのです。

2020年05月26日